9.8 C
Japan
木曜日, 12月 25, 2025

『ファイナルファンタジーXIII』発売16周年

Must read

小林 舞
小林 舞
5878762 北海道青山市南区田辺町青山5-8-7
- Advertisement -

判断力が試される“オプティマ”システムと、ライトニングの強く気高い旅路

2009年12月17日(平成21年)、プレイステーション3向けソフト『ファイナルファンタジーXIII』が発売された。本作は「ルシ」となった者たちの過酷な運命を描く物語であり、シリーズの中でも意欲的な試みが多く盛り込まれた作品として知られている。

物語の中心に据えられるのは、強さと気高さを兼ね備えた女性主人公ライトニングだ。『ファイナルファンタジーX-2』のユウナなど前例はあったものの、ナンバリング作品における女性単独主人公は当時、多くのファンに新鮮な驚きを与えた。

本作の世界では、人智を超えた存在「ファルシ」によって使命を刻まれた者は「ルシ」となり、その使命を果たせなければ魔物「シ骸」へと堕ち、使命を果たしても最終的にはクリスタルになるという過酷な運命を背負う。ライトニングたちはそのルシとして、人類の敵と見なされ、聖府から追われる身となりながら、生きる道を模索していく。

序盤は専門用語が多く、世界観を理解するのが難しいと感じたプレイヤーも少なくなかっただろう。しかし、ビルジ湖で描かれる、ライトニングの妹セラがクリスタル化してしまう場面は、この旅の残酷さを強烈に印象づけた。婚約者であるスノウの悲痛な叫びも、物語の重さを際立たせていた。

キャラクター造形も印象的で、ライトニングをはじめとする女性陣が芯の強い存在として描かれる一方、男性陣には中年のサッズや、弱気で未熟な少年ホープなど、あえて不完全さを強調した人物が配置されている。妹を救うために突き進むライトニングの「できるできないの問題じゃない」「やるしかなければ、やるだけだ」という言葉に対し、ホープが「強いから、そんなこと言えるんですよ」と返す場面は、両者の価値観と心の距離を象徴する印象的なシーンだった。

物語が進むにつれて、サッズやホープもそれぞれ葛藤を乗り越え、成長していく。その過程が丁寧に描かれている点も、本作の大きな魅力と言える。

技術面では、当時の最新ハードであったプレイステーション3の性能を活かし、キャラクターの表情表現が飛躍的に進化した。短いセリフと表情だけで感情を伝える演出も多く、映像表現の完成度は非常に高かった。サッズの特徴的なアフロヘアも、質感まで細かく描写されており、その“ふわふわ感”に感心したプレイヤーも多かっただろう。

バトルシステムには、過去作のジョブに相当する「ロール」を状況に応じて切り替える“オプティマ”システムが採用された。敵の行動に合わせて瞬時に判断を下す必要があり、スピード感と緊張感のある戦闘が展開される一方、難易度の高さに戸惑ったプレイヤーも少なくなかった。

実際、後にXbox 360版ではイージーモードが追加され、プレイステーション3版にもアップデートで同様の調整が施された。特にXbox 360版は英語音声であったこともあり、異なる印象で物語を楽しめた点も特徴的である。

数ある強敵の中でも、とりわけ手ごわかった存在として挙げられるのがシドだ。『XIII』では聖府軍の遊撃部隊「騎兵隊」を率いる軍人として登場し、戦闘中にロールを切り替えるため、こちらも柔軟な対応を求められる。後半には“メタモルフォーゼ”によってさらに強力な攻撃を仕掛けてくるため、何度も敗北を経験したプレイヤーも多かったはずだ。

『ファイナルファンタジーXIII』は、その後『ファイナルファンタジーXIII-2』でセラが主人公を務め、最終章となる『ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII』で再びライトニングが主人公として帰ってきた。ネコ耳姿や「食べちゃうにゃん」といったセリフなど、意外性のある演出も話題となり、シリーズ三部作は独自の存在感を残している。

発売から16年を経た今もなお、『ファイナルファンタジーXIII』は賛否を含めて語り継がれる作品であり、挑戦的なシステムと印象的なキャラクターたちは、シリーズ史に確かな足跡を刻んでいる。

- Advertisement -
- Advertisement -

人気のある

- Advertisement -

最新記事