2010年(平成22年)1月9日、プレイステーション・ポータブル(PSP)用ソフト『キングダム ハーツ バース バイ スリープ』が発売された。ディズニーキャラクターとスクウェア・エニックス作品が融合したアクションRPG『キングダム ハーツ』シリーズの一作であり、初代作品のおよそ10年前を描いた前日譚として高い評価を受けている。

本作は、2007年にニンテンドーDS用『キングダム ハーツ 358/2 Days』や携帯電話向け『キングダム ハーツ コーデッド』とともに、新プロジェクトとして発表されたタイトルのひとつ。携帯機向けでありながら、シリーズの根幹に関わる重要な物語を描く作品として、当時大きな注目を集めた。
物語の中心となるのは、キーブレード使いのテラ、ヴェントゥス、アクアの3人。彼らはマスター・エラクゥスのもとで修行を積み、“キーブレードマスター”を目指していたが、キーブレード戦争の再来を企むマスター・ゼアノートの陰謀に巻き込まれていく。本作では、この3人の中から主人公を選んで物語を開始でき、同じ世界をそれぞれ異なる視点で体験できる構成が特徴となっている。

共通のワールドを巡りながらも、出会う人物やボス、出来事は主人公によって異なり、別のキャラクターの行動が後の物語に影響を及ぼしていたことが明らかになる演出も印象的だった。ひとつの大きな物語を多角的に描く手法は、シリーズの世界観をより立体的なものにしている。
また、初代『キングダム ハーツ』以前の時代が舞台となっているため、幼いソラ、リク、カイリの姿が描かれるほか、後の時代にはすでに消滅していたワールドが健在である点も見どころのひとつだ。『リロ&スティッチ』のワールドでは、スティッチが“試作品626号”として登場するなど、時系列を活かした細かな演出もファンの心をつかんだ。
登場するディズニーワールドは、『リロ&スティッチ』のほか、『眠れる森の美女』『白雪姫』『シンデレラ』『ヘラクレス』『ピーター・パン』など、名作ぞろい。それぞれの主人公ごとに異なるギミックが用意され、同じワールドでも異なる体験が楽しめる設計となっていた。
バトルシステムも進化を遂げ、コマンドデッキを用いた直感的な操作が可能に。デッキを自由に編成し、△ボタンひとつで魔法やアクションを連続して繰り出せる爽快感は、多くのプレイヤーから支持を集めた。さらに、ボードゲーム風のミニゲーム「コマンドボード」や、マルチプレイ対応の「ミラージュアリーナ」といったやり込み要素も充実しており、本編そっちのけで熱中した人も少なくないだろう。
2011年1月20日には、海外版をベースに新要素を追加した『キングダム ハーツ バース バイ スリープ ファイナルミックス』が発売。現在では、PlayStation 4やPC(Epic Games Store)向けの『キングダム ハーツ -HD 1.5+2.5 リミックス-』に収録されており、シリーズのほかの作品とあわせてプレイすることが可能だ。
シリーズの原点へとつながる重要な物語を描いた『キングダム ハーツ バース バイ スリープ』は、発売から16年を経た今なお、多くのファンに語り継がれる一本となっている。